先生の活動

佐賀大学のRedesign力

未来を見つめ、地域と共に
新しい時代を築く大学として、
現在の学びや環境を最適化、再構築(Redesign)する
教職員や学生の活動を紹介します。

この記事は佐賀大学広報誌 第45号「かちがらす」
佐賀大学広報室2021年10月発行に掲載されたものを転載許可を得て掲載しています

建築系教員の設計監修で理工学部4号館を改修し、地域貢献の象徴が誕生

地域にひらかれた空間と教材化した校舎が魅力

▲後列左から、小島昌ー教授(建築環境工学・建築設備学)、三島伸雄教授(アーバンデザイン・保全再生デザイン)。
前列左から、中大窪千晶准教授(建築環環境工学)、後藤隆太郎准教授(農村計画・居住環境デザイン)、
平瀬有人准教授(建築デザイン・建築設計)、宮原真美子准教授(建築計画学・環境行動学)

2021年春に理工学部4号館の改修工事が完工しました。「都市工学部門全体の配置を3号館と合わせて見直し、分散していた建築系の研究室と演習室などを4号館にまとめて機能を高めました」。そう話すのは建築系教員が設計監修にあたった改修プロジェクトでリーダーを務めた三島先生です。

見どころの―つは1階に整備したデザインギャラリーです。ガラス張りで開放感あふれる広々としたギャラリーは、外から学生の姿が見えて、隣接するデザインスタジオや外部テラス、レストランと一体的に利用できます。壁面では、東京オリンピック2020のエンブレムを手がけた美術家・野老朝雄氏の作品がひと際存在感を放っています。「佐賀大学の地域連携のシンボルを作りたいと思い、教員のつながりで野老さんに相談して実現しました」と後藤先生。

一枚9cm×9cm、100段階の瑠璃色で表現した計800枚の有田焼の陶板タイルを用いた、2m×2m一対の大作は圧巻です。実は作品の仕上げにあたって、ちょっとしたハプニングがありました。タイルができて施工する際、ナンバリング通りにタイルを並べても、釉薬の状況や窯の温度などが影響して微妙に色が違い、うまくグラデーションになりません。そこで急きょ学生に協力してもらい、実際に目で見て色を確認しながらタイルを並べ替え、無事に完成したのです。「学生にとってもいい経験になりました」と中大窪先生は言います。

▲さまざまな建材にサインをつけて建材の名前が分かるようになっている。
天井には木材を並べて柔らかなニュアンスを出す一方で、配管の様子も見える

また、「校舎を教材化・見える化して、実践的な教育環境にしたことも特徴の一つです」と平瀬先生は力を込めます。例えば、天井をスケルトンにして補修部分や空調、電気設備の配管等を見せたり、床や外壁などに建材名のサインをつけたり、佐賀県産の杉材を使ったりと、建築を学ぶ学生にとって校舎がリアルな教材となっています。

「学内外の皆さんの協力のおかげで、全国的にも珍しい話題性のある学び舎が誕生しました。学生はやる気が高まり、顔を輝かせて勉強していますよ。地方創生に力を入れている大学として魅力ある人材を育てつつ、もっと地域に貢献したい。”地域の縁側“(=社会との接点)をコンセプトにした新校舎をぜひ見に来てください」と三島先生はメッセージをくれました。

関連リンク:佐賀大学広報室アーカイブ
都市工学科の学生たちがタイルを並び替えている様子(動画)

https://youtu.be/7VUshVZYwNk

地域創生とアートを軸に活動する学生団体佐賀を活性化

「鳥栖未来計画」を受託し駅中心市街地の未来を描く

▲高桑正誠さん、小澤健さん、伊藤ひなたさん、轟木祐衣さんらMake-Senseのメンバー

佐賀大学の1~3年生28人によるプロジェクト&デザインチーム「Make‐Sense(メイクセンス)」。2015年に発足し、地域創生とアートを軸に多様な活動を行っています。活動の一つとして、2021年2~9月まで「鳥栖未来計画」プロジェクトを担っています。鳥栖市議会自民党烏和会が学生の協力を得たいと佐賀新聞社を介してMake‐senseに話があり、メンバーの中から芸術地域デザイン学部の学生5人でチームを結成しました。

プロジェクトのミッションは「鳥栖駅橋上化・高架化計画に向けた都市再生計画の調査」と「鳥栖駅中心市街地の再生に関する学生視点からの提案」です。都市計画を学んでいる高桑さんは「従来はディベロッパーやコンサルタントに委託される仕事ですが、型にはまらない学生の斬新なアイデアを求められ自由にやらせてもらっています」。烏栖出身でグラフィックデザイン専攻の小澤さんは「学生を信頼して任せてもらえることに驚きうれしかった」と話します。

▲デジタルの技術を使って、鳥栖駅エリアの建物を立体で表現。
下の地図は、駐車場や室き家を赤色でマッピングしたもの

メンバーそれぞれの専門分野を生かして議論を重ね、意欲的に活動しています。鳥栖駅の中心市街地を5回見てまわり、駐車場や空き地などが分かるデジタル地図を作成。また、江戸時代の地図からさかのぼってまちの変遷を調べ、九州最古駅の一つでまちのシンボルでもある鳥栖駅をどう活用するか検討しました。小倉や門司港、大分へ視察にも行きました。国勢調査などのデータを紐解き、烏栖市には発展のポテンシャルがあることに気がついたそうです。

最後に提言書をまとめ、烏栖市街地を立体で再現した模型やパネルも作りました。「提言書はなかなか読まれないので、市民をはじめ多くの方々がイメージしやすく興味を持ってもらえるように立体にしました。30年50年後を見据え、鳥栖をより良くしていくためのたたき台にしてほしい」と高桑さんは期待しています。

「サガ・ライトファンタジー」の一部デザインと設営を担当

秋から冬にかけて佐賀市の風物詩となっている「サガ・ライトファンタジー」にも参加しています。佐賀駅前から約1.2kmの大通りを中心に、街路樹や店舗などを美しくライトアップするこのイベント。「団体設立後に初めて受けた仕事で、毎年、佐賀バルーンミュージアム横の広場のデザインと設営を担当しています。全員参加で、1年生にとっては初めての活動になります」と小澤さんは説明します。

▲昨年は「連続性」をテーマにオブジェを制作。
ブースのの照明には時間ごとに色が変化する機材を使った

昨年団体に入り、オブジェ作りに参加した轟木さんは「糸をボンドで風船に巻き付け、中にライトを入れて光らせるコットンボールを作るのに試行錯誤しました。コロナで大学の授業はオンラインが中心だったけれど、Make‐Senseでは感染対策をしっかりしながら他の学生と活動できて有意義でした」と振り返ります。同じく昨年初めて参加した伊藤さんは「全身つなぎを着て川に入り、最初は慣れない作業で難しかったのですが、だんだんうまく楽しくなりました。点灯式で私たちが担当したスペースに明かりがついたときはとてもうれしく感動しました」と笑顔で話します。今年のライトファンタジーは、轟木さんと伊藤さんら2年生が中心になって進めており、「今年は自然をテーマに作っています。ぜひ多くの人に見てもらいたいです」と意気込んでいます。

昨年はコロナの影響で、団体の説明会も入団申込もオンラインだったものの、例年以上の学生が加入してくれたといいます。「ホームページを作り、SNSで積極的に告知したことが功を奏しました。コロナ禍でも時間やマネジメントを工夫することで団体として成長できました」と小澤さん。高桑さんは「2年生からの提案を受けて、この夏には初めて学生の作品をマルシェに出店しました。これからも地域にひらかれたプロジェクトで佐賀を盛り上げ、ここ佐賀にも多彩な可能性を持つ若者がいることをPRして次世代につないできたいです」と力強く語ってくれました。

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