【SpecialContentsVol.41】インタビュー/教育学部学校教育課程 萱島 知子 准教授
ローズマリーなど身近な食品が身体に及ぼす影響の解明を目指す
ローズマリーとストレスの関係について研究
私は今、「ハーブのローズマリーのストレス軽減効果」をメインに研究しています。ハーブは料理や薬、香料、防虫などに利用される、私たちの暮らしに役立つ植物です。さまざまなハーブの中でローズマリーに着目したのは、その特徴的な成分であるカルノシン酸に興味を持ったから。体の中で抗酸化効果がある、有効性の高い成分です。ハーブは古来いろいろな効果が言い伝えられており、ローズマリーはハッと目が覚めるような強い香りで、集中力や記憶力を高めると言われています。勉強中の眠気覚ましにもおすすめです。
一方、ストレスに興味を持ったのは、助教時代に「精神的なストレス状態ががんの病態を悪化させる」という論文を読んだことがきっかけです。ストレスは精神的な疾病に影響するというイメージを持っていましたが、がんや糖尿病、腸の病気など身体的な疾病にも影響を与えることを知り、驚きました。そこからストレスについて研究を進めています。
心身の健康に寄与する身近な食品を探したい
「脳腸相関」という言葉があるように、脳と腸は相互に影響を与え合っています。腸機能を維持することは、脳機能や全身の健康維持のために重要です。腸機能を保つことでストレス状態を緩和できるのではないかと考え、そのために有効な食品を探しています。
現在は、ストレスによる腸内環境の悪化に対して、ローズマリーやその成分が与える影響について調べています。カルノシン酸や他の成分を含むローズマリー抽出物にはストレス軽減効果がある可能性が明らかになりました。この研究を進めつつ、今後は対象を広げて、日本の食文化や佐賀に根差したもので、人々の健康に寄与できるような食品や成分を見つけることができればと考えています。
生活者の視点を大切に実生活の向上を目指す
食品のストレス緩和効果のほかに、嗜好性(おいしさ)についても研究しています。味の強度を数値化できる装置で、例えば農学部の先生が農作物化を目指し栽培されている山菜(のびる)の味の特徴を調べたり、リージョナル・イノベーションセンターのご紹介で新しく商品開発されるドレッシングの味を他のものと比較したりしました。
食生活学は、生活の向上を目指す家政学の一分野です農学部や他の学部でも食品についての研究はできますが、私は「生活を科学する楽しさ」を感じながら、生活者の視点を大切に、実生活にどう還元できるかを考えながら研究しています。
貪欲に広く学んで日常にも生かしてほしい
教育学部では、小学校教員、中学・高等学校の家庭科教員を目指す学生を対象に教えています。主に担当しているのは、栄養学や調理科学についての講義、調理実習、実験、演習です。授業では、知識や技術の習得と共に科学的に食生活を理解できることを目指しています。講義で学んだ知識を実習で活用したり、実験で確認したりすると、新たな課題や疑問が生じます。それをさらに探求して、解決する力を身につけてほしいと考えています。
近年、教員はブラックな労働環境にばかりスポットが当たりがちですが、本学部に来る学生は教職に対して高い意識と意欲、大きな希望を持っていて、指導できることにやりがいを感じています。学生が教員になったときにどのよな授業をするのかを頭に入れて、知識や技術はもちろん、今日的な食生活の課題にも対応できるように意識しています。また、家庭科は生活の基礎を作る重要な教科で、すぐに実生活に応用できることも魅力です。しっかり学んで、日頃の生活に生かしてもらえればと思っています。
学生の皆さんには自分の学びを限定せず、貪欲に学んで吸収してほしいと願っています。広く学んでいると、他の分野とつながることが多々あります。例えば、食物の授業でマヨネーズについて学び、水と油が混ざり合う乳化を知っていると、被服の洗剤の話につながるなど、発見する楽しさがあります。ですから、今の自分の視野だけで物事をみて「あれは面白そうじゃない」「これはやめておこう」と判断するのはもったいない。たくさんある学びの機会をぜひ活用してください。