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【SpecialContentsVol.31】インタビュー/医学部附属病院 形成外科 上村 哲司 准教授

産学医共同でメディカルシューズ「アサヒフットケア」を開発

下肢切断にも至る深刻な糖尿病足病変

近年、糖尿病患者の増加や合併症の進行、動脈性硬化症の併発などを背景にして、糖尿病足病変に罹患する人が増えました。糖尿病患者の足部は、神経障害や血流障害などの病態が関与して壊疽や潰瘍となり、足部感染症を引き起こして下肢切断を余なくされる場合もあります。それを避けるためには初期の運動療法が重要ですが、不適切なシューズやその履き方が原因で足に傷ができ、却って感覚が鈍い足に壊疽や潰瘍を引き起こすことが課題となっていました。

▲「アサヒフットケア」のラインアップ。 下3足は定価 8,800円(税込)

これまでにも医療用の靴型装具や健康靴はありましたが、履き心地、重さ、デザイン性や価格の面から、患者さんから日常的に使用するのは難しいという声をいただいていました。そこでアサヒシューズ株式会社と本学医学部附属病院形成外科が連携し、医学的エビデンスに基づいた足に優しいフットケアシューズの共同開発を2011年11月に開始しました。

10年かけて開発したフットケアシューズ

共同開発を始めて約10年間、患者さんの歩行解析試験とデータ検証、それに基づいた靴の改善を繰り返し、足に優しい靴づくりを追求してきました。結果、この靴を履くと歩行時の足底圧が一般靴の半分程度にまで軽減されることが確認できました。

▲患者さんの協力のもと歩行解析試験を何度も行った

こうして完成したのが「アサヒフットケア」です。
つま先が上がった形状の「ロッカーソール」が歩行時体重移動を無理なく誘導し、特許を取得した機能「モーションガイドスロープ」で正常足に負担をかけない正しい歩行を促しています。外部からの衝撃を和らげるかかと部分の構造、擦り傷を防ぐため縫い目や段差を極力減らした特長もあり、とても履き心地がよいと好評です。また、患者さんが日常的に履きやすいよう、一般的なスニーカーと変わらないデザインや価格設定にもこだわりました。

▲ファッション性の高いデザイン、ふっくら包み込む履き心地も注目された

足の健康への関心を広げ、心身の健康へ

アサヒフットケアは2021年9月の販売開始以来、糖尿病患者さんだけでなく、立ち仕事の多い医療従事者などたくさんの方に愛用いただいています。高齢化がますます加速する日本の社会において、「足の健康」は糖尿病の有無に関わらず全ての方々に大切であると考えています。しかし日本では家の中で靴を脱ぐ生活習慣からか、足の健康と靴との関係に関心を持つ人は比較的少ないようです。今後もアサヒフットケアを通じて自分の足に合った靴と適切な履き方を知ってもらい、ウォーキングなどの運動を行ってもらえるよう、啓発活動を続けていく所存です。

関連リンク:佐賀大学とアサヒシューズ「産学医」共同開発 『アサヒフットケア®』が新発売!
https://sagadaipress.saga-u.ac.jp/archives/2261/

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