【Special Contents Vol.15】インタビュー/化粧品科学 共同研究講座 徳留 嘉寛 特任教授
化粧品を科学的に研究し、佐賀発のコスメをアジア、世界へ。
徳留 嘉寛 教授
薬学部卒・大学院薬学研究科修了後、大手化粧品企業、ポーラ化成工業(株)研究所で10年以上にわたり研究活動を行う。その後、武蔵野大学、城西大学の薬学部での教職を経て2021年より、佐賀大学「化粧品科学 共同研究講座」特任教授に就任。
化粧品科学の人材育成と研究拠点を作る国立大学として全国的に貴重な取組みを実践。
美と健康に関する産業を集積し、将来的にアジア市場のコスメ拠点を目指す事業である「コスメティック構想」を推進する佐賀県と、唐津市を拠点とする「ジャパン・コスメティックセンター(JCC)」、そして佐賀大学によって2021年6月1日に設立されたのが佐賀大学化粧品科学共同研究講座です。目的は、化粧品に活かせる新技術の開発と人材育成、研究の拠点を作ること、また玄海町や唐津市の離島をはじめ、佐賀県産のユニークな素材を活かした製品作りも目指しています。
何より一番注目すべきは、化粧品を専門に研究している国立大学はほぼないということ、つまりこれは国内でも例を見ない取組みだということです。自治体と大学が一体となって、「化粧品研究での日本一(頂点)」を目指しています。
「実のある研究」を追求商品化を実現し、消費者に届ける。
私の研究は、「皮膚の構造研究」と「巨大分子を皮膚内部に入れる」という2つが主軸です。これまで、ヒアルロン酸は分子が大きいため皮膚表面から肌内部へは入らないと考えられてきましたが、研究を進め、塗布するだけで皮膚内部に浸透させる技術の開発に成功しました。これは教科書の記述が変わるほどの成果だと自負しています。このようにヒアルロン酸の製剤化技術をはじめ、様々な技術を「ポーラ」などの大手企業との共同研究によって数多くの商品化につなげてきました。私は「研究のための研究」で終わるのではなく、商品化を考えた研究が重要だと考えます。それは、かつて恩師からいただいた「薬学は実学だ」という言葉の影響が大きいのですが、研究の先に商品が生まれ、消費者が喜ぶ…それこそが実のある研究なのではないかと思うからです。そして自身の研究はもちろん、学生や研究者のサポート、また九州では佐賀だけにある貴重な研究施設を活用して、佐賀・九州と世界中の研究者との架け橋になることも私の役割だと考えています。
幸せな人を、もっと幸せにする化粧品業界の研究者・技術職を輩出。
2021年度は、農学部3年生後期の選択科目として「コスメ産業学」の講義を行いました。必修でないにもかかわらず、多くの学生が履修したことからも、化粧品科学が大変興味深い分野だということが分かります。化粧品はブランディングやマーケティング、パッケージデザイン等、様々な学びが活かされます。前職の大学で私の研究室の卒業生の多くは大学院へ進み、8割以上が化粧品業界の技術職として就職しました。本学の学生にも希望の就職を叶えられる素地が十分にあり、人材育成や新技術の開発に向けて、この数年間における講義や研究などの取組みは、とても重要だと感じています。
化粧品は気分を高めてくれて、「幸せな人をより幸せにできる力」があります。化粧品業界を支え、誰かが喜ぶことを生み出していく――そんな素敵な研究に、一緒に取り組んでいきませんか。