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【Special Contents Vol.14】インタビュー/理工学部 理工学科 電気電子工学部門 嘉数 誠 教授

世界最高水準の出力を達成!ダイヤモンド半導体でデバイスを世界に先駆けて実用化へ

理工学部 理工学科 電気電子工学部門 嘉数 誠 教授
1990年日本電信電話株式会社に入社し、基礎研究所に所属。研究に取り組みながら、日本国内の大学、ドイツやフランスの大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所などで講師や研究員を務める。2011年に佐賀大学大学院の教授に就任。

2021年、佐賀大学と企業との共同研究によりがダイヤモンド半導体パワーデバイスの作製に成功しました。
これを機に、20年以上も困難だと思われていた研究が実用化に向けて一気に動き出しました。

直径1インチ(約2.5センチメートル)のダイヤモンド半導体ウエハー
測定中のダイヤモンド半導体ウエハー上に作製した6G用半導体デバイスの顕微鏡

ますます必要性が高くなるパワー半導体デバイス。

近年、電気自動車、ハイブリッド車などの普及、スマートフォンやパソコンの普及と大容量化など、身近なところでも電気エネルギーの利用が増えていますが、将来的にもますます増えていくことが考えられます。
この電気エネルギーを制御・変換する時に重要な役目を果たすのが半導体で、家電製品など身近なところでも多く使われています。現在の半導体の主な材質はシリコンですが、携帯電話の基地局や新幹線といった大電力を必要とする場合には、シリコンカーバイド、窒素ガリウムを使用した次世代のパワー半導体が使われています。しかし、もっと大容量の周波数・電力を必要とする人工衛星やテレビの地上波放送局においては半導体では力不足で、いまだに真空管が使用されているのが現状です。真空管は半導体に比べて効率が低く、エネルギーロスも多いため、環境保護の観点からも半導体化が求められています。

わずか2インチのダイヤモンド半導体で佐賀県の約10倍、350万世帯の電力をコントロール。

そこで注目されているのが、ダイヤモンド半導体です。ダイヤモンドは「究極の半導体」と言われ、高周波で大電力性能のパワーデバイスとして、20年以上前から世界中で研究が行われてきました。しかしこれまでは、電流値が極めて低い、デバイスの寿命が極端に短い、4ミリ角までしか作れないといった課題を抱え、実用化は厳しいとされてきました。その課題を克服するきっかけとなったのが、企業との共同研究による新しい技術でした。
サファイア基板の上に人工ダイヤモンドの結晶を成長させることで、直径2インチ(5センチメートル)の円形状まで大きくし、純度も高いダイヤモンドのウエハー(半導体材料を薄い円盤状に加工したもの)を開発。そしてこのダイヤモンドのウエハーを使って、私たちは半導体デバイスを作製しました。
今までダイヤモンド本来の機能を発揮できなかった原因を見つけ、従来の考えにとらわれない革新的な発想で新しいデバイス構造を考案し(特許出願中)、電気伝導を改良。従来のダイヤモンド半導体の約100倍という世界最高の出力電力を記録し、耐久性も飛躍的に向上させました。このダイヤモンド半導体は、2インチの大きさで佐賀県の約10倍、350万世帯で使われる電力を全てコントロールできるほどのパワーがあります。小さいながら出力が高く、非常に効率がいいんです。

次世代通信システムや宇宙分野への応用。

ダイヤモンド半導体は、今でも主流となっているシリコンや、パワー半導体と言われるシリコンカーバイドや窒素ガリウムと比べ、放熱性や耐電圧性に優れており、地上はもちろん、宇宙空間でも安定して作動させることができるという特性を持っています。
また、現在は世界最大で2インチ(約5センチメートル)の円形状の大きさですが、サファイア基板が6インチまであるため、ダイヤモンド半導体も6インチまで大きくすることが可能であると考えられます。高品質化、大口径化が進むことで、電気自動車、人工衛星などをはじめとする航空・宇宙分野、第5世代(5G)移動通信システムのさらに次世代となる6Gの携帯基地局の設備など、幅広い分野での応用が期待されています。

究極の半導体を佐賀から世界に向けて。

究極の半導体と言われながらも、これまでは基礎研究段階で止まっていたダイヤモンド半導体ですが、今回の成功を受け、海外でも積極的に研究が行われるようになってきました。しかし私たちは、この技術を日本発・佐賀発の産業として発展させていくことも大切な役割であると考えています。性能を産業用として使えるレベルまで引き上げること、コストを削減することなど、実用化には課題もありますが、スピード感を持って研究を進め、5年以内の量産化を目指しています。
研究には設備や人材が必要です。佐賀大学は熱心な学生も多く、ゆとりある研究室には企業が使用するような最新の実験装置も置くことができ、環境として非常に充実しています。また県内には、より専門的な実験が行える佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターといった施設があることも恵まれていると言えます。
佐賀大学で実験・研究に専念することで次々と実験成果も出せ、世界トップレベルの論文雑誌に数カ月ごとのスピードで掲載されています。今後もこの環境を活かして研究に取り組み、日本の最先端の半導体産業に貢献したいと考えています。興味のある人は、ぜひ一緒に取り組んでみましょう。

佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターの実験設備を利用し、ダイヤモンドが世界最高品質であることをシンクロトロンで実証。
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