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【Special Contents Vol.11】インタビュー/教育学部 学校教育課程 木原 誠 教授

人の想像力と心の豊かさを育み、異文化理解に通じる「妖精学」研究

妖精学の道を切り拓く

私は現在、教育学部にて「異文化理解」という分野の中で妖精を題材にした授業を行っています。20歳の頃、アイルランドの西端スライゴー州ギル湖に浮かぶイニスフリー島で妖精と出会ったことが、「妖精研究」の始まりです。白鳥の背中に乗って遊ぶ50cm程と小さくも神々しい姿に強烈に心を奪われ、以来その存在を追って世界各地を放浪しました。

英語講師などの仕事をしながら個人的に「妖精学」の研究を続けていましたが、ある時、本学のアイルランド文学専門の教授が私の研究に興味を持ち、声をかけてくださったおかげで、本学で研究ができるようになりました。日本では決してメジャーではない学問ですが、敷かれたレールのない世界だからこそ、自ら道を切り拓いていく ことにやりがいを感じております。

木原先生の著書(左2冊)と妖精約400種類が掲載された事典。

「禰󠄀豆子」「ミイ」も妖精?

妖精を幽霊や妖怪などと似たような存在だと考える人もいるかと思いますが、決定的な違いは、実体があるかどうかです。幽霊は見える人と見えない人がいますが、妖精はそこに存在すれば必ず見えるものです。妖精と妖怪の違いに関しては研究者の間でも意見が分かれますが、私は「人間が彼らに恋愛感情を抱く可能性があるか」を主な判断基準にしています。例えば、『ムーミン』に登場する「スナフキン」「ミイ」は人間ではなく妖精。鬼と人間のハーフ である『鬼滅の刃』の「禰󠄀豆子」も、私は妖精だと考えています。

妖精から教わる「想像力」

異文化理解とは、国や地域の間だけのものではありません。「あの世とこの世の違い」という究極の異文化を、二つの世界に介在する妖精が教えてくれます。文化とは本来、生者も死者も過去も未来も合わせて成り立つものではないでしょうか。今、目の前に見えているものだけを見ていたら、文化を本質的に理解することは難しく、想像力が枯渇するでしょう。妖精や死後の世界といった「見えないもの」を見ようとすることは、想像力を養います。そして豊かな想像力は、自分自身を理解すること、他者の存在や気持ちを思いやることにもつながります。私にとって妖精とは研究対象というより敬愛する「お師匠様」。今後も妖精が教えてくれることを探求し続け、その学びやワクワクする感情の大切さを、学生の皆さんに伝えていきたいと思います。

研究室のドアにはアイルランドの妖精「レプラコーンの交差点」と
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