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【Special Contents Vol.10】佐賀大学医学部研究チーム「心筋梗塞のサイズを縮小、心不全を予防するワクチン」開発に成功

佐賀大学医学部循環器内科 野出孝一教授と白木綾教授らの研究チームが、心筋梗塞サイズを縮小し心不全を予防するワクチン開発に成功しました。マウスによる実験で効果が確認され、今後は人への応用研究をすすめます。この研究論文はイギリスの科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。

※左より佐賀大学医学部 野出孝一教授(循環器内科)、白木綾教授(医工循環器学)

「可溶性エポキシドヒドロラーゼ」の働きを抑えるワクチンは世界初

心筋梗塞は、心臓の血管が詰まることで心筋が壊死してしまう病気であり、心不全の原因の一つです。この病気の原因のひとつとして、『酵素「可溶性エポキシドヒドロラーゼ」による脂肪酸「エポキシエイコサトリエン酸(EET)」の分解』が考えられています。EETには血管拡張、血栓抑制、抗炎症などの働きがあり、分解されることでその働きが弱まり、心筋梗塞に至ると考えられます。
今回開発されたワクチンは、可溶性エポキシドヒドロラーゼの働きを邪魔することでEETの分解を抑えます。実際にこのワクチンを心筋梗塞状態のラットに投与したところ、血中濃度が高まったEETによって詰まった血管まわりに新たな血管が作られ、心筋梗塞の範囲が縮小したことが観察されました。
この「可溶性エポキシドヒドロラーゼ」に対するワクチン開発は世界初です。

エポキシエイコサトリエン酸(EET)に対する初の治療薬

EETはアラキドン酸という脂肪酸から作られます。ロイコトリエンなどもアラキドン酸から作られる脂肪酸であり、それらに対する治療薬は既に使用されています。一方、EETに対する治療薬は市場には出ていません。今後の臨床試験で有効性が確認されれぱ、EETに対する初の創薬となります。

今後の展開は

現時点では、ラットでの効果の評価に留まっているため、ヒト化ワクチンの開発に着手。また、心筋梗塞を起こしてからワクチンを打つのでは抗体が産生されるまでに時間がかかるため、即時治療が可能なモノクロ―ル抗体の開発を国際医療福祉大学との共同研究で行っています。また下肢虚血モデルや心不全モデル、高血圧モデル、脳梗塞モデル等、他の疾患モデルでの応用を進めています。
ワクチン開発が実用化となれば、予防や治療また再発防止にも役立つ可能性があります。

【研究者】
代表者:佐賀大学医学部循環器内科教授 野出 孝一 
分担者:佐賀大学医学部医工循環器学教授 白木 綾
     佐賀大学医学部循環器内科特任助教(現・ネーションワイド小児病院) 木塚 貴浩
     大阪大学大学院医学研究科教授 中神 啓徳

【研究成果の公表媒体(論文や学会など)】
 Scientific Reports published online (2022/4/28)。A Novel Soluble Epoxide Hydrolase Vaccine Protects Murine Cardiac Muscle Against Myocardial Infarction. Scientific Reports (2022)12:6923.

詳しくは下記をご覧ください。
参照元:佐賀大学広報室
心筋梗塞サイズを縮小し心不全を予防するワクチン開発に成功

https://www.saga-u.ac.jp/koho/%e4%bc%9a%e8%a6%8b/2022053024837

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