【Special Contents Vol.8】インタビュー/佐賀大学医学部附属病院 感染制御部 部長 青木 洋介
新型コロナウイルスワクチン接種の様子。
感染制御部が勧める新型コロナ対策は基本的な取り組みと心の安定が第一
県内コロナ感染対策に尽力
本学医学部感染制御部では、各種感染症の診療および院内での感染症の伝播防止対策を十数年前より行なっています。研修医にも感染症教育を徹底しており、研修医2年次の選択コースで感染症診療の初期教育を行っているほか、医学部5年生の臨床実習を当部で受け入れています。2016年には「卒後初期の感染症診療・教育による抗菌薬適正使用の実践・啓発の10年に及ぶ取り組み」が、国の第1回薬剤耐性(※)対策普及啓発活動表彰において厚生労働大臣賞を受賞しました。
当部は佐賀感染防止対策地域連携協議会の事務局でもあります。佐賀県内で新型コロナウイルスのクラスターが発生した場合には、該当地域にいる協議会メンバー(感染症対策専門の看護師など)が保健所と協働して感染症対策の改善点を指導します。指導といっても難しいことをお伝えするわけではありません。予防衣の着脱や室内の動線の分け方など、皆様がわからず困っていらっしゃることについてご説明し、安心していただけるよう努めています。
※薬剤耐性:細菌が持つ薬剤の耐性。元々持っているものもあるが、突然変化し耐性を得る場合も。
体と心を守るために
新型コロナウイルス感染症を取り巻く状況は変化を続けていますが、個人が心がけるべきことは一貫して変わりません。重要なのは人が多い場所でのマスク着用、手指消毒の徹底という基本的な対策です。この感染症は飛沫で伝播しますので、布やウレタン製より通しにくい不織布マスクが有効です。空気感染はしませんので、散歩中など屋外で近くに人がいない場合は着用する必要はありません。ワクチンについては、基本的に受けていただくほうがよいと考えています。 また、感染症に対する不安から心を守ることも大切です。多くの情報を入手したくなる気持ちはわかりますが、テレビのニュースなどを見過ぎてしまうことには注意してください。中には不確かな情報や大げさな表現もあり、かえって不安を助長させられることもあります。
過度に恐れず日頃の対策を
今後は、新型コロナウイルスに感染しても重症になる方は減少していくと考えられます。感染症は一般的に、多くの人がかかるようになると病状は軽くなる傾向にあります。また新型コロナのように、急激に広がったウイルスほど収まるのが早いこともこれまでの研究データから見て取れます。ウイルスはマスクを通り抜けて人体に侵入したり、消毒が効かなくなったりすることはありません。状況は刻々と変化していますが、まずは落ち着いて過度に恐れず、これまで通りの対策を続けていきましょう。(2021年12月15日取材)