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【SpecialContentsVol.37】インタビュー/医学部附属病院 肝疾患センター 原なぎさ 特任助教(管理栄養士)肝炎医療コーディネーター

高オレイン酸大豆を使った健康食と栄養士の育成で肝がん撲滅へ

肝がん死亡率ワースト2位返上に向けた取り組み

佐賀県は長年に渡り肝がん死亡率が全国平均より高いため、肝疾患センターでは2012年1月より肝炎・肝がん対策に取り組んでいます。私は前任地(三重大学病院)で肝疾患の栄養療法を中心に、栄養指導や臨床研究に携わってきました。また「治療食は美味しくない、作るのが難しい」という患者さんの声に応えて、グルメとメディカルを組み合わせた治療食教室「グルメディカル教室」も担当してきました。2021年5月、縁あって佐賀大学医学部附属病院 肝疾患センターに着任し、肝がん撲滅の一助となるような研究や活動を行っています。
肝がんの主な原因は、かつてB型肝炎・C型肝炎でしたが、近年は脂肪肝へと変化しています。脂肪肝の原因は肥満やメタボリックシンドローム、アルコール摂取過多、カロリー摂取過多、運動不足とされています。佐賀のお米や肉、果物、お酒や菓子類は大変美味しくて私も感動しましたが、食べ過ぎは脂肪肝になるリスクがあり注意が必要です。

▲関連病院にて栄養アセスメントに基づき栄養指導を行う

食事療法に最適な「高オレイン酸大豆」

脂肪肝は薬による治療法がなく、カロリー摂取を適正に戻す食事療法や消費カロリーを増やす運動療動療法が主となります。しかし、栄養バランスを欠いた食事やダイエットを意識した極端な食事制限を続けることで筋力や筋肉量、身体機能が低下する「サルコペニア」を引き起こしかねず、「バランスの良い正しい食事」をすることが大切です。
そこで注目したのが、佐賀大学農学部が開発した高オレイン酸大豆(佐大HO1号)です。この高オレイン酸大豆(別称ハイオレ大豆)は、悪玉コレステロールの上昇を防ぎ、動脈硬化や心疾患予防に効果があるとされるオレイン酸を、一般的な大豆の約4倍多く含みます。
ご飯をついお代わりしてしまう方や、たんぱく質が不足しがちな方には、お米2合と大豆1合を一緒に炊き上げる「大豆ご飯」をお勧めします。大豆ご飯はよく噛むため、茶碗1杯でも十分な満腹感が得られます。また、大豆ご飯1人分(約170g) で、エネルギー283kcal、タンパク質10.4g、脂質4.8g(うち一価不飽和脂肪酸1.4g)、食物繊維4.4gを摂取できます。これほど優れた食材はそうそうありません。
このハイオレ大豆と、脂肪肝やメタボ予防に効果的な料理を知ってもらおうと、市内のレストランと一緒にメニューを考えました。ある店舗では佐賀B級グルメの「シシリアンライス」のご飯にハイオレ大豆を混ぜ、脂肪を低減させるためにマヨネーズの量を調整し、豚肉は鶏肉に置き換えました。シェフにとっては自慢のメニューだったでしょうが、食材を変更した際の栄養量データを共有して実践してくれました。
別の複合型レストランでは、ハイオレ大豆おにぎりに合わせる副菜を5名のシェフが腕を振るい、鶏肉の皮を外し塩麹でやわらかくした蒸し鶏、ハイオレ大豆を挽いてひき肉と混ぜたつくね、ハイオレ大豆粉を使ったケーキ等を考案、さらに野菜をふんだんに取り入れ見た目も美しいバランス弁当に仕上げてくれました。
これらを「世界肝炎デー」に限定メニューとして提供し、大変好評を博しました。工夫すれば、健康食も「美味しくて満足できる」 料理になります。せっかくなら美味しいものをバランスよく食べて健康な体づくりをしていただきたい。その思いでハイオレ大豆や、野菜をたっぷり使ったレシピをケーブルテレビや料理サイトで発信しています。

▲「世界肝炎デー」(7月28日)での啓発活動 (上)と飲食店との限定コラボメニュー(中左)佐賀B級グルメをバランス食に調整した「ありたどりと大豆御飯のシシリアンライス」 (『JONAISQUARE CAFÉ』佐賀市城内1-6-10 サガテレビビル1F) (中右) 佐賀市を訪れた厚生労働省健康行政特別参与・杉良太郎氏に絶賛された 「肝臓にうれしすぎるランチ BOX」(『FOOD FACTORY FLEX』 佐賀市栄町2-8)

肝炎医療コーディネーター 薬局の栄養士を育成

肝がん撲滅には、県民が健康診断や検査を受ける「受検」から病院で精密検査を受ける「受診」、治療を受ける「受療」、その後の「フォローアップ」という4つのステップを適切に進むことが重要とされ、その橋渡しや患者・家族のサポートを「肝炎医療コーディネーター(肝CO)」が担っています。肝疾患センターでは今まで1825人の肝COを養成してきました。
管理栄養士が勤務する保険薬局は全体の10%未満といわれていますが、患者さんにとって保険薬局は身近な存在であり、病院で聞き忘れたことを相談するケースも少なくありません。薬剤だけでなく、栄養に関しても医療機関と連携したサポートが薬局で可能となれば、患者さんの理解は深まり、行動変容が期待できます。
「管理栄養士としての質を高めたい」という熱心な薬局は増えており、肝疾患センターと保険薬局が協力して勉強会や研修会を開催し積極的に肝CO資格の取得をサポートしています。脂肪肝の方も年々増え続けており、栄養面で患者さんを支援できる肝CO養成・人材育成は重要です。
佐賀県は全国に先駆けて肝がん対策に取り組み、それらは「佐賀モデル」として注目されています。私は肝疾患の栄養に関する研究とともに、健康食となりうる佐賀の美味しい食材を見つけ、皆さんの健康づくりに寄与していきたいと考えています。

▲(左)YouTubeで脂肪肝対策のアウトドア料理を配信 (中) メスティン (箱型飯盒) を使ったカオマンガイなどの料理(右)米2:豆1の割合で炊いた大豆ご飯。煎り大豆も加えて香ばしさアップ。クックパッドにレシピ掲載※ハイオレ大豆は武雄市「武雄温泉物産館」で販売。

YouTube「肝疾患センターチャンネル」
https://www.youtube.com/channel/UCFAaqfu-vBkrDZwekiZ2LYQ

クックパッド「Sagankenのキッチン」
https://cookpad.com/kitchen/48055791

2023年7月16日(日)開催「世界肝炎デー2023 in SAGA」

2023年は7月16日(日)にゆめタウン佐賀でイベント「世界肝炎デー2023 in SAGA」を開催いたします。COVID-19の影響で対面開催は4年ぶりとなります。ぜひみなさんお越しください。

詳しくは下記をご覧ください。
佐賀大学広報室:世界肝炎デー2023 in SAGA 開催のお知らせ

https://www.saga-u.ac.jp/koho/event/2023062630136

チャンネル佐賀大学【さきどり情報局】 令和5年7月号『世界肝炎デー2023 in SAGA開催』

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