【Special Contents Vol.17】学生ベンチャー起業家/失敗を恐れない自由な発想と環境が新たな起業家を導き出す
学生は「大変な研究室」と言いながらも、和気あいあいとした雰囲気。しっかりと勉強ができ、「ここなら面白いことができる」「ここなら自分を伸ばせる」と思えるのだとか。
写真中央/佐賀大学理工学部 中山 功一先生。
佐賀大学は、創造的人材の育成を目指して学生起業家育成の講演会を開催したり、佐賀大学ベンチャーの称号を設けて支援を行うなど、学生ベンチャーに前向きに取り組んでいます。
そのような佐賀大学で注目を集めているのが、理工学部の中山研究室。学生起業家を輩出している環境や、学生起業家の姿を紹介します。
中山研究室は、理工学部理工学科情報部門の中山功一先生の研究室です。ドローンを使った防災研究、ディープラーニング、ブロックチェーンなどを中心にしながら、30人ほどのメンバーが自由に研究を行っています。中山研究室から最初に起業したのは、2017年の合同会社ロケモAI。以来、次々にメンバーが起業し、現在4人の学生起業家が在籍していますが、「起業はあくまでソリューションの一つ」というのが先生の考えです。優秀な学生が多く、仕事が増えた時にはお互いに助けあえる環境があることも、起業を支えている一つの要因です。
学生起業家座談会
Q.起業のきっかけを教えてください。
梶原さん もともと起業に興味はありましたが、在学中に起業する想定はしていませんでした。研究の中で開発したシステムを仕事として提供するには、会社というカタチをとった方がいいだろうということで、起業することになりました。
森山さん 私も当初から起業しようと思っていたわけではありません。ただ、研究室に入り、いくつか特許をとったり仲間に出会う中で、自分に自信がついたのは確かです。「やるぞ!」と勢い込んだわけでなく、淡々とやるべきことをやっていたら「目の前に起業があった」という感じです。
山城さん 私は、腰がつらい中山先生のために作った〈フワット〉が福祉機器コンテストで受賞し、製品化することになったのが起業のきっかけです。機器の製造には資金が必要なのでクラウドファンディングを活用しましたが、その後のフワットの発展とリスク分散として起業しました。
浅川さん 私は昨年10月に起業したばかりです。昨年、佐賀県から研究室に仕事依頼があった時に、先輩方から声をかけてもらったのがきっかけです。入学当時は起業するとは思ってもいませんでしたが、勢いで起業することになりました。
中山先生 研究室から4人の社長が出ていますが、特に起業を勧めているわけではありません。やりたいことに対して起業が向いていれば勧めるし、向いていなければ勧めません。起業は、やりたいことをやるための一つの方法に過ぎません。
Q.大学生活や起業を通して感じたことは?
梶原さん 佐賀大学でプログラミングを学んだこと、中山研究室に入ったことが、私の大きな転機です。起業に際しては、特に大変だと感じたことはありませんが、起業後は様々な苦難を経験しました。今の会社は個人経営で自分の思い通りに決断することができ、非常におもしろいです。
森山さん 私も、入学してソフト開発にのめり込めたことがよかったです。佐賀大学や中山研究室には、自分が頑張った分だけ応援してくれる環境があります。起業した当初は、「失敗したらやめればいい」と思っていましたが、お客様と接していく中で覚悟が定まり、今はずっと仕事を続けていきたいと思っています。
山城さん 大学に〈フワット〉の研究予算を組んでもらったり、佐賀大学発ベンチャーの第1号をいただいたりと、佐賀大学には応援してもらっていると感じています。イベントや展示会ではお客様と直接関わることも多く、お客様がいることのありがたさ・面白さを感じています。
浅川さん 入学当初は勉強にもあまり面白みを感じられませんでしたが、研究室に入ったらすごい人ばかりで「ここなら面白い、頑張れる」と思いました。仕事としては難しいことも多いですが、研究室には個人的に目標にすべき人も多くて、日々やりがいを感じています。
中山先生 研究室は技術を教える場ではなく、一人ひとりの働き方や学び方を見つける「場」、能力を伸ばす「場」、活躍できる「場」でありたいと思っています。今回、学生たちの話を聞いていると、自分の気持ちが伝わっているようで、とてもうれしく思います。